損害保険契約のルールが新しくなります

・  自動車保険、火災保険、傷害保険など、損害保険をご契約いただいたお客様(保険法では「保険契約者」といいます。)や、傷害保険などの保険の対象となっている人(保険法では「被保険者」といいます。)の権利、損害保険契約の適切な運営のためにお客様にご協力いただくことに関するルールなどが変わります(生命保険などのルールも変わります)。

・  新しいルールは2010年4月1日以降ご契約いただく損害保険契約に適用されます(保険金の支払い時期など、一部のルールはそれ以前に契約した損害保険契約にも適用されます)。

なぜ新しくなるのか

・  これまでの保険契約については『商法』に定められていましたが、今回これに代わる新しい法律として『保険法』が制定されました。

・  商法の保険契約に関するルールは約100年前に制定されたもので、現代の社会や経済の情勢にあわない部分があり、全面的に見直しが行われました。

・  新しい『保険法』では、お客様(契約者)保護や権利の拡充の視点が随所に織り込まれており、たとえば交通事故などにあわれた被害者の方が優先的に保険金を受け取れるように改められました。

・  損害保険や生命保険だけでなく、傷害保険や、入院保険、がん保険など、広く利用されている傷害疾病保険に関するルールも新たに設けられました。

(ご注意)

1. このご案内では、個人のお客様が、生活やレジャーなど、ビジネス以外の目的でご契約いただく損害保険契約に適用される新しいルールの概要を説明しています。法人のお客様や個人のお客様がビジネスのために契約される損害保険契約のルールは一部異なっている部分があります。

2. このご案内では、特に限定をしていない場合は、実際の損害額をお支払いする保険(損害保険)に加え、ケガや病気に関して一定の金額をお支払いする保険(傷害疾病定額保険)を合わせて、「保険」としています。

3. このご案内の中で、『(経過措置あり)』と表示している項目については、保険法施行日前に締結された契約に対しても適用されます。

4. 生命保険を含む『保険法』の全体的な概要につきましては、法務省のHPに資料が掲載されていますのでご参照ください。

・  パンフレット「保険契約のルールが新しくなります」: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji155-2.pdf

・  「保険法の概念図」: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji155-1.pdf

・  「保険法の概要」: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji155.html

5. 『保険法』の条文につきましては、下記の法務省のHPをご参照ください。

・  保険法: http://law.e-gov.go.jp/announce/H20HO056.html

6. それぞれのお客様の保険契約に適用されるルールの詳細につきましては、ご契約いただいている保険会社にご照会をお願いいたします。

保険の新しいルールの概要

1.      各種の保険に適用されるルール

(1) 告知義務

A. 自発的申告義務(現行)から質問応答義務へ変更され、保険契約者は、重要な事項のうち保険会社から告知を求められた事項のみ告知すればよいこととなります。

B.保険会社は、保険契約の対象となる物や人の状態に応じて、保険の契約条件や保険料を決定しています。そのため、これらの保険金をお支払いする可能性の度合い*に影響を与える重要な事項について、保険会社がお伺いする質問に正確にお答えいただく必要**があります。

  *保険法では「危険」といいます。
  **保険法では「告知義務」といいます。

C 保険会社の質問に対して事実と異なる回答をした場合や簡単に調べられるのに調べずに回答し、結果として間違った内容の回答をした場合などには、保険会社はその契約を解約*することがあります。

  *保険法では「解除」といいます。

D.保険契約が解約されると、解約された時以降は契約としての効力はなくなり、それ以降に発生した事故については保険金をお支払いしません。

E.保険契約の解約の時までに発生している事故については、解約の原因となった、事実と異なる事項や正確にお答えいただけなかった事項と、発生した事故との間に因果関係がある場合を除き、保険金をお支払いします。

(2) 危険の増加・減少(経過措置あり)

A.保険契約に影響を与えるような重要な事項については、ご契約後に内容に変更が生じた場合、保険会社にご連絡をお願いしています。

B. 通知いただいた結果、ご契約いただいている保険契約について、保険金をお支払いする可能性の度合いが高まり*、お支払いいただいた保険料では不足すると保険会社が判断する場合には、追加の保険料をお支払いいただくことを条件に、保険会社は保険契約を継続いたします(内容の変更が生じた後、変更が生じたことを知りながら通知いただけなかった場合や正当な理由がなく通知が遅れた場合などには、保険会社は保険契約を解約することがあります。)。

*保険法では「危険の増加」といいます。

C.通知いただいた結果、ご契約いただいている保険契約について、保険金をお支払いする可能性の度合いが、保険会社の一定の基準を超えると保険会社が判断する場合*に、保険会社は保険契約を解約することがあります。

*保険法では「引受範囲外の危険の増加」といいます。

D.保険契約が解約されると、解約された時以降は契約としての効力はなくなり、それ以降に発生した事故については保険金をお支払いしません。

E.ただし、危険の増加の時から保険契約の解約の時までに発生した事故については、危険の増加と発生した事故との間に因果関係がある場合を除き、保険金をお支払いします。

F.保険契約を契約した時以降に、保険金をお支払いする可能性の度合いが大きく低下*し、いただいた保険料が余ることとなった場合には、お客様のご請求により、保険料の一部をお返しします。

*保険法では「危険の減少」といいます。

(3) 保険金の支払い時期

A.保険会社は、適正な保険金のお支払いするために、事故の原因や損害額など、保険契約上必要とされる事項を確認するための合理的な範囲の期間内で、保険金をお支払いすることが求められています。

B.この期間内に保険金をお支払いできない場合は、保険会社は、利息をお支払いするなど、支払いが遅れたことに対して責任を負うことになります。

C.ただし、お客様が、保険金をお支払いするために必要な調査を妨害したり、調査にご協力いただけなかったことが原因で保険金のお支払いが遅れた場合には、保険会社は保険金のお支払いが遅れたことに対する責任を負いません。

D.保険契約上確認が必要とされる事項やその確認をするための合理的な期間の具体的な規定は、保険契約の条項(普通保険約款などと呼ばれています。)に規定されます。

(4) 保険契約者による解除

A.保険をご契約いただいたお客様*は、いつでも保険契約を解約することができます。

*保険法では「保険契約者」といいます。

B.保険契約が解約されると、解約された時以降は契約としての効力はなくなり、それ以降に発生した事故については保険金をお支払いしません。

 (5) 消滅時効

保険金を請求する権利や保険料の返還を請求する権利は、請求できるようになった時から3年間請求しないと、それ以降請求することできなくなります。

(6) 超過保険

契約締結時に保険金額が保険の目的物の価額を超えていた場合、保険契約者および被保険者が善意で重大な過失がなかったときには、保険契約者は超過部分を取り消し、保険料の返還を請求できます。

(7) 重複保険

同じ保険の対象について複数の保険会社で重複して保険を契約していた場合、保険金の支払いはこれまでの「独立責任額分担方式」から「独立責任額全額方式」に変更となります。これにより保険会社は、損害額全額について支払責任を負います。

2.      賠償責任保険に適用されるルール

(1) 被害者の被害の回復(経過措置あり)

A.加害者が倒産したような場合でも,被害者を一般債権者と区別し、優先的に保険金を受け取れるようにするための規定が新設されました。

3.      傷害保険などに適用されるルール

(1) 被保険者の同意

A.傷害保険や医療保険など、ケガや病気に基づき一定の金額や実際に要した金額の保険金などをお支払いする保険について、その保険を契約する人*が、自分以外の人を対象とする保険を契約する場合には、その保険の対象となっている人**(その人がケガしたり、病気になったときに保険金などが支払われる対象となる)**の、そのような保険を契約することに対する同意が原則として必要です。

*保険法では「保険契約者」といいます。
**保険法では「被保険者」といいます。

B.上記A.の同意は、被保険者(死亡保険金についてはその相続人)が保険金受取人に指定される場合など、一定の条件を満たす保険契約には不要とされています。損害保険会社が契約するほとんどの傷害保険や医療保険は、同意が不要な保険契約に該当します。

(2) 被保険者による解除請求

A.保険契約者と被保険者が異なる保険契約の被保険者は、以下のような場合に、保険契約者に対して保険契約を解約するよう請求することができます。

B.保険金の取得を目的に、死亡やケガなど、保険金の支払い事由を発生させる危険性が生じるなどのように、保険契約者と被保険者の信頼関係が失われた場合や、離婚など、契約の時に同意した理由となった親族関係が終了するなど、同意をした時と事情が大きく変わった場合に、保険契約者に対して解約を請求できます。

C.保険法により、保険契約を契約する時に被保険者の同意が不要とされている保険契約の被保険者は、いつでも保険契約者に対して解約を請求できます(実際に同意していたときは、上記B.の場合以外は請求できません)。

(3) 保険契約者以外の者による解除の効力(介入権制度の導入)(経過措置あり)

  差押債権者など、保険契約の当事者以外の者が保険契約を解除しようとした場合に、保険金受取人が差押債権者等などに解約返戻金相当額を支払うなど一定の行為を行えば、保険契約を存続させることができます。

4.      保険の悪用を防止するためのルール

(1) 重大事由解除

保険の悪用を防止するため、保険金殺人や保険金詐欺など、保険会社とお客様との信頼関係が失われ、保険契約を継続することが困難となる事態が発生した場合には、保険会社は保険契約を解約することがあります*。

*保険法では「重大事由解除」といいます。